The 24th Japanese Society of Informatics for Diabetes Mellitus

第24回
日本糖尿病インフォマティクス学会年次学術集会

会長挨拶

WELCOME MESSAGE

出発点は初心のありか

第24回日本糖尿病インフォマティクス学会年次学術集会

会長 大杉 満

(国立国際医療研究センター 糖尿病情報センター)

この度、2024年8月17日と18日の二日間で第24回日本糖尿病インフォマティクス学会を東京で開催させていただくことになりました。日本糖尿病インフォマティクス学会の発展に貢献されてきた前理事長の安西慶三先生、現理事長の松久宗英先生並びに関係者の皆様に感謝いたします。

今回の学術集会のテーマは「出発点は初心のありか」とさせていただきました。これは T・S・エリオットの詩の一節から来ております。

We shall not cease from exploration
And the end of all our exploring
Will be to arrive where we started
And know the place for the first time.

いくつもの解釈が成り立つようですが、我々の日常診療や研究に当てはめて「出発点に初心あり」「初心が出発点」の意味を汲むのが良いと考えます。技術の進歩により、個人の血糖値や体重だけなく、今までは知り得ることができなかった活動量や食事などの大量の情報が集積される時代になってきています。レセプトデータや診療データの利活用から日本における糖尿病診療の実態を浮き彫りにする研究環境が整ってきております。日常診療のデータを集め、効率的に研究を進める試みが、糖尿病分野でもJDDM、J-DOME、J-DREAMSなどが継続され、その成果を見ることができるようになってきました。しかしながら、それぞれの情報は各個の最適化がなされ洗練化が進められているものの、医療情報全体で統合して活用することは重要視されていないか、実現からは程遠いのが現在の姿です。理想の姿は、これらの医療情報が統合されて活用されることで、保健や医療の現場で診療の質を上げ、糖尿病と生きる人、さらにはその周囲の人々が安心して暮らせるようになることだと考えます。さらには、データの効率的な利活用は、保健や医療の現場に携わる者だけでなく、それらの環境を整える者や計画を立てる立場の方々にも有益と考えます。そして保健・医療の現場や、診療環境や医療政策を考える者がどのようなデータやプログラムを望んでいるかを知ることは、医療機器やプログラムを作る側にとっても有益と考えます。本学術集会がこのような観点から、多くの方々にとって、日常の保健・医療の実践に役に立つような研究成果を学び合う場だけでなく、どのようなニーズがあるかを知る場になることを願っております。

例年、本学術集会には、多様な職種の方々にご参加いただいていております。医師、薬剤師、看護師、管理栄養士、検査技師、理学療法士などの医療関係者のみならず、情報技術の研究者の方々や、デジタル医療を供給・推進する企業の方々にもご参加いただき、是非とも上記のような研究成果を持ち寄るだけでなく、交流することによって新たな研究・開発課題が見つかるような「出発点」になるようにと考えております。

本学術集会は本郷通りから東京大学へ向かうと、キャンパスが最初に姿を表す場所に位置する東京大学伊藤国際学術研究センターにて開催いたします。夏の最中ながらも清涼が感じられるような試みを考えておりますが、皆様には熱い議論の場になることを望みます。本学術集会が、皆様にとって実り多い会となりますよう、ご指導ご支援のほど何卒宜しくお願い申し上げます。

2023年12月吉日